2007年11月26日

ジェンダーと言葉(2)

日本語とジェンダーを考えたとき、
問題とされてきたのが女性口語・女言葉であるという。

「〜わ」「〜よ」と語尾に付くのが
もっとも分かりやすい女性口語。
たとえば「あたしばかよね」という文を読んで、
主人公が男だと思う人はいない。

もちろん男性口語もある。
「〜ぜ」とか。

でも、現実にはそれらはトランスしている。
たとえば
「〜でしょ」という言葉は文章の中だと女性口語なのに、
実際には男性も(男性のほうが?)使う。
テレビの中の「おネエMAN」たちの言葉遣いは
女性口語を上手く操っているので、面白い。有名な女性口語の一つは
「よくってよ」とかいう「てよ」言葉。
コレは明治の女学生が流行として使っていたものを
近代文学が幕開ける中で、
作家たちが「口語文」とか「言文一致体」とか言う形で
無理矢理に定着させてしまったものらしい。
で明治の小説家たちが
どうして女性口語・女言葉を
無理に作り出す必要があったのかといえば、
それは平安文学から続く
「地の文と会話文がごっちゃまぜ」という文化が
根強く残ったためだろう。

英語の文は、直訳したときに
「彼は言いました」「彼女は言いました」ばかりになって
うんざりしてしまう。
しかし発言者は明確なのでわかりやすい。

一方、日本の古典文学はとにかくごちゃ混ぜの中から
会話文と地の文を分けて
その地の文の敬語の段階などによって
発言者を特定しなければならないから大変だ。
私は更級日記を原文で読んだときに
主人公のセリフと姉のセリフがとにかくごちゃ混ぜなので、
頭が痛くなった。

責任者を明確にしない日本の文化と
これは根本的につながっていることなのかもしれない、
と思ったくらいだ。

江戸時代の作品も、まだまだ読みにくい。

それが明治の文学以降、
非常に読みやすくなるのは、
地の文がスッキリしたというだけではなく、
セリフの書き方で人物が書き分けられているせいだ。
その書き分けに女性口語と女言葉は大きく貢献している。

ということは、
女性言葉というのはもともと記号だったのだ。

「〜だわ」「〜ですわね」と語尾に「わ」を付けるのも、
もともとは山の手言葉だという。
女性口語や女言葉は、
山の手言葉や芸者言葉、それに公家言葉や女房言葉を
もとにしているものが多い。
身分が崩壊するなかで
上流の言葉が庶民に流れ込み、
確かにそれをもてはやして使っていた層もあるだろう。

それが作家たちによって現実から抽出された。
抽出されることによって
それはより鮮明に「女言葉」として誕生した。

コレに近いと思うのは
夫がよく(こっそりと)観ている
美少女系というか萌え系というか
そういうアニメで、女の子たちが使う
「〜ですわ」という言葉。
ちょっと面白いと私は思っている。

ものすごく不自然な女性口語だからこそ、耳に残る。
残るから、これぞというキャラに使わせる。
だから
あれは一種の記号みたいなもので
現実には、ああいう口調で話す女の子っていない。

いないけれども、大阪弁などと同じくらい
ある程度完成されているので、
新しいアニメや漫画や小説が生まれたときに、
「〜ですわ」キャラは増殖していく。
100年後に21世紀初頭の文化研究をする人は
もしかすると、
「〜ですわ」が普通に使われていたと思うのかもしれない。
そのうえ、
漫画やアニメの世界では「てよ」言葉も健在である。

私が小学校のときに男の子たちは
「ごはん」と言わずに「メシ」と言うのが
カッコイイと思いこんでいたらしく、
ある時期みんなで「メシ」と言っていたが、
そのうちにやめた。
あれは不思議な現象だった。
漫画か何かの影響だったのだろうか。

そう、影響なのだ

完成した文学作品の影響力によって
こんどは
大正から昭和初期にかけて「女ことば縛り」みたなものが
女性に対して行われたんじゃないだろうか。
私はそう考えているから、
今、それが崩れたとしても、別に何の不思議はない。






posted by ルクレツィアの娘 at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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